家庭医の視点を持つ産業保健活動を実践する  ~安藤労働衛生コンサルタント事務所~

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認知症診療を考える ①

医学書院から出版されている「誤作動する脳」の著者である樋口さんから教えていただくことは非常に多いです。言葉一つ一つに重みがあって、胸に刺さります。単純に「当事者の方の語り」という簡素な表現では表現しきれない奥深さを感じ、私にとっては、「(認知症の方に)内側から生きている世界を語っていただく」という表現がしっくりくきます。



こちらの動画も樋口さんから教えていただいたものです。大変わかりやすい松本卓也先生のお話しを拝聴し、医学用語的に「妄想」と言われるものの理解がさらに深まりました。自分自身の認知症の方への対応や診療が、通り一辺倒なものになってしまっていないかと考えさせられました。



医学的には「妄想」は下記のような特徴が考えられているのですが、

・現実と合わない

・強く信じている

・他者から「違うよ」と言われても訂正が効かない

これだと、その人の考えは「訂正することができない」という諦めのような固定観念にとらわれてしまいます。



これらの前提を外して、松本先生のおっしゃるように、単に「強情になっているだけなんだよね」と、一般的な感覚に落とし込むと、「人が強情になるときはどんな時かな?と考える」「困っているとき」「自分が逃げることができないくらい困っているときに、人は強情になる」と理解が進む。そこに諦めという感覚は無く、「困っていることに一緒に解決策を探しましょう」となる。逆に、前向き。



妄想の内容にフォーカスしてアプローチすると強制入院という、強権を発動することになってしまって、当事者の方をより頑なにしてしまうこともある。そうではなく、困っていることにフォーカスする。ただ、これをご家族の方とも共通認識として、同じ方向を向いて共同体を形成して取り組んでいくには、それなりに時間がかかります。



もちろん、ある程度、認知機能をHDS-Rなどで評価することもやADLIADLの視点からの評価も大切。認知症診療の奥深さを再認識することができました。