家庭医の視点を持つ産業保健活動を実践する  ~安藤労働衛生コンサルタント事務所~

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安藤労働衛生コンサルタント事務所 ホームページ開設のお知らせ

2022 年3月 安藤労働衛生コンサルタント事務所ホームページを開設いたしました。

以下のリンクから、ホームページをご確認ください。

今後、ブログ記事もこちらに移転し、数か月に1度程度のペースで更新予定です。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

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【漢方・東洋医学 ⑤】

漢方は生薬レベルで考えたほうが良い理由。


漢方には、麻黄や甘草、附子など、いくつかの気を付けなければならない生薬があります。甘草の摂取は1日6g程度まで、というのは漢方を生薬レベルでみる癖がないと、ついオーバーしてしまう危険性があります。

 

芍薬甘草湯は1日量7.5g中、6gの甘草を含んでいます。つまり、芍薬甘草湯を1日量処方してしまうと、ほかの漢方を追加することはほぼできないという状況になります。

 

甘草は、甘いため、種々の苦い漢方の味を調えるために大変よくつかわれる生薬の一つです。近年、外来でも2種類以上の漢方が併用されていることがあるのですが、漢方にあまり慣れていない若い先生方には、そのあたりを意識していただけるように伝えていきたいと思います。

 

とはいえ、私もかつて附子中毒でひどい目に合ったことがあります。附子の用量の基準は0.5~1g/日とされており、用量を守ることの大切さを痛感した出来事でした。

 

最後に、日本東洋医学学会の専門医を取得するか否かについては、個人の考えを優先するでいいように、私自身は感じています。漢方診療を生業とする場合には、持っていた方がよいと思いますが、「人の役に立つために漢方を生かす」という視点からは、必ずしも「資格」は必要無いように思うからです。日本東洋医学学会の皆様からは、おしかりをいがだくかもしれませんが、「漢方」は、それが合う人には、「人生を変えるほどの威力がある」と私自身は思っていますが、人の役に立つためには「それで充分」とはいえないように思います。人は一生学び続けることが大切!私自身の軸でもあります。皆様の東洋医学への学びを心から応援いたします!

 

漢方は合う人にとっては、その人の人生を変えるほどの影響力があると思います。ぜひ、漢方を必要とする方の人生を漢方でサポートしてあげて頂きたいと思います。

 

末尾に、私自身が漢方を勉強させていただいた施設をご紹介させていただきます。

北里大学東洋医学総合研究所 (kitasato-u.ac.jp)
②井齋偉矢先生がいらっしゃったころの静内病院、現在はこちらのサイトが参考になると思います。

https://www.skillup-mt.jp/kanpo/index.html

 

「人生、別離なくんば、たれか恩愛の重きを知らん」それが、大塚敬節先生の残されたお言葉のひとつだそうです。恩返しと恩贈り、別離は恩贈りのために大切な一歩なのだと思います。


※一部、重複するところがあるのはご容赦ください。内容は個人的な見解です。個人的な頭の整理の意味もあり書かせていただいております。

【漢方・東洋医学 ④】

これまでの私の人生で漢方に数々の危機を救ってもらった「漢方」への恩返しの意味もあり、土曜日の休日の自分の時間を削って「人の役に立てる漢方外来」を目指して、漢方外来をさせていただいていた時期があります。スタッフの皆様のご支援のおかげもあって、受診患者さんゼロから始まって、口コミだけで1年後には、予約が2ヶ月待ちになっていました。 

 

そのころ、漢方に関する記事を生協新聞に掲載いただきました。手渡しで約2万世帯の組合員のご家庭に届けられたそうです。高校時代から学び続けてきた漢方の勉強を積み上げて、総合診療医としてさらに知識や技量を深めなければと気持ちを新たにしていた時期でした。

 

漢方は、弱っている人の体に染み渡るように効いて、身も心も癒してくれることがあります。ただ、以外に知られていないのですが、【弱りきっている体には強すぎる】ことがあります。特に消化管が弱っているときには控えた方が良いことが多いです。なぜなら、漢方の生薬は、腸管粘膜に強い炎症がある際には、薬効を得にくいと考えられるからです。

 

【内臓疾患ですでに臓器障害がある方、高齢の方】にはさらに注意が必要です。思わぬ副作用を招くことがあります。「漢方って副作用がないんですよね?」といわれることもありますが、漢方も薬であるために、西洋薬と同様に副作用があります。このため西洋薬と同様に、副作用の有無のモニタリングや副作用が現れた時には、中止することも大切です。

 

すでに内臓に障害がある方やご高齢者の場合には、こちらのサイトを参考にされるとよいと思います。データベースもしっかりしていて、非常に役立ちます。

 

漢方スクエア - 漢方・漢方薬の情報を医療関係者向けに提供 (kampo-s.jp)

 

 

「人生、別離なくんば、たれか恩愛の重きを知らん」それが、大塚敬節先生の残されたお言葉のひとつだそうです。恩返しと恩贈り、別離は恩贈りのために大切な一歩なのだと思います。


※一部、重複するところがあるのはご容赦ください。内容は個人的な見解です。個人的な頭の整理の意味もあり書かせていただいております。

【漢方・東洋医学 ③】

漢方の処方には、


① 病名処方(各疾患ガイドラインに基づく処方)
② 証と診察による選択(古典的な診察に基づく処方)
③ 診察と対症療法(各個人の体質の特性と生薬の特性を考慮した処方)

3通りあると思うのです。

 

①最も西洋医学よりな処方が病名処方、②古典的な処方は証による処方。③診察と対症療法は、舌診や腹診、脈もみたうえで、漢方の得意分野と西洋医学の得意分野を癒合させて、生薬の特性も考えながら、その人に合った漢方を選ぶ方法。例えば、、、大建中湯は腸の蠕動運動を促すので、冷えや腸蠕動低下による便秘に処方する、あるいは柴胡桂枝乾姜湯と柴胡加竜骨牡蛎湯いずれもメンタル不調の方に使える漢方ですが、いわゆる冷え性の人には、【体を冷やす作用のある竜骨】を含む柴胡加竜骨牡蛎湯よりも、【桂皮や乾姜】といった【体を温める生薬】がより多く含まれている柴胡桂枝乾姜湯の方が良いだろうと選択していくやり方です。

私は、漢方の威力が最も発揮される【自分に合う漢方の処方】は、③ではないかと感じています。漢方と約30年向き合ってきて感じることです。

この③の漢方処方をする際に、役立っている本をご紹介させていただきます。とくに生薬に関する東洋学術出版社からの「生薬ファインダー」と「漢方診療ハンドブック」は大変貴重な情報が含まれていて私のバイブルにもなっています。

 

 

「人生、別離なくんば、たれか恩愛の重きを知らん」それが、大塚敬節先生の残されたお言葉のひとつだそうです。恩返しと恩贈り、別離は恩贈りのために大切な一歩なのだと思います。

 

※一部、重複するところがあるのはご容赦ください。内容は個人的な見解です。個人的な頭の整理の意味もあり書かせていただいております。

【漢方・東洋医学 ②】

保険診療で処方できるのはエキス剤としての漢方です。女性によく使われる当帰芍薬散、じつは煎じ薬の「当帰芍薬散」とエキス剤の「当帰芍薬散」とでは香りが全く違います。個人的には、むかし毎日「当帰芍薬散」を煎じていて、家じゅうに煎じ薬の香りが広がることで、香りの癒し効果を感じていました。

 

自分に合う漢方を探す際には、まず【嗅いでみて、飲んでみて、止めてみて】が良いと思います。

① 臭いがだめで漢方が飲めない人がいらっしゃいます。こういう方には漢方は無理強いしないほうがよいと思います。
② 即効性のある漢方もありますが、数週間から数か月は続けて飲まれた方がよいと思います。というのも、漢方の効果は、すぐわかることもありますが、「そういえば、なんとなく調子いいな」くらいごく自然に感じる「良さ」もあるからです。
③ よく、「漢方なんて効いているかどうかわからない」といわれることがあります。そういう方には、「では一回止めてみますか?」と提案します。そうすると、漢方が効いている方の場合には、数か月、場合によっては数年くらい経ってから、「なんだかまた調子が悪くなってきました」とおっしゃる方がいます。漢方の効果は、そのくらいマイルドに、でも着実に効いてくれていることがあります。それは、例えば西洋薬のNSAIDsのように、「効いている感」を実感できないものもあるかもしれませんが、その支えを失ってみると、後からその効果を得ていたことをジワジワ実感するという場合があるからです。

 

漢方のアロマ効果!? えっ!? そんなのあるの!?という方。あります。・・・と、私は信じています。

 

10代の頃に、わたしが初めて漢方を飲み始めたころ、毎日 何十分もかけて漢方を煎じて飲んでいました。

 

麦茶をわかすような要領で、漢方を水から炊いていくのです。麦茶と異なる点は、沸騰してから、最初の水量が、1/5くらいに減るまで弱火で煮ることです。

 

このとき、台所から周りまで、漢方のとてもいい香がします。幼心に、その香りを嗅ぐと、とても心が落ち着き、朝から元気がでました。


じつはこれは、漢方のアロマ効果だとわたしは信じています。


現在、病院で処方される漢方のほとんどはエキス剤で、なかなかその香りを楽しむところまではいかないかもしれませんが、漢方薬局に足を踏み入れたときに ぷ~んと香る 「あの香り」。


わたし流 「体に聞く漢方」では、漢方薬局など漢方の匂いを嗅いだときに、

・嫌な気持ちがしない方。

・こころがホッとする方。

そんな方の諸症状に「漢方」は試してみる価値があると思います。

 

「人生、別離なくんば、たれか恩愛の重きを知らん」それが、大塚敬節先生の残されたお言葉のひとつだそうです。恩返しと恩贈り、別離は恩贈りのために大切な一歩なのだと思います。

 

※一部、重複するところがあるのはご容赦ください。内容は個人的な見解です。個人的な頭の整理の意味もあり書かせていただいております。

【漢方・東洋医学 ①】

わけあって、私が漢方を学ばせていただいてきた「歩み」について、頭の中の整理の意味もあり、少しだけ語らせていただこうと思います。皆様にお役に立つような本やサイトもご紹介させていただこうと思います。その前に、私がここまで漢方について知ることができたのは、これまで漢方を教えてくださった何人かの恩師のおかげでもあるので、その感謝の意も込めて、お世話になった先生方をご紹介させていただきます。

 

私がはじめて漢方と出会ってから、まだ30年くらいしか経っていません。まだまだ漢方については、わからないことが多く、いまだに師に相談させていただくことがあります。

 

わたしに始めて漢方を教えてくださったかたは、もうこの世にはいらっしゃいません。とても優しい先生でした。当時 高校生だった私に、下記の本を紹介してくださいました。

 

人間 この未知なるもの (知的生きかた文庫)/三笠書房


大学入学後、漢方の学びの原点ともいえる出会いは、いまから16年前のことです。


※大塚敬節先生のご子息で、矢数同明先生と北里東医研に医史学研究室(医史研)を開設された大塚恭男先生と始めてお目にかかったのは、学生時代に参加した、下記のセミナーでした。

 

医学生・臨床医のための東洋医学セミナー(夏期セミナー)


http://www.kitasato-u.ac.jp/toui-ken/education/index.html

 

残念ながら大塚恭男先生に直接教えを請う機会がありませんでしたが、田舎から一人セミナーに参加していたわたしに、嫌な顔ひとつされずに、本の背表紙に下記の言葉を書いてくださいました。

 

「萬菫不殺」:「萬」は蠍、「菫」は トリカブトの古字で、蠍の毒とトリカブトの毒は 各々 単独に食べるときは人を殺す力があるが、両者を一緒にすると毒を相殺して人人を殺さないでかえって薬効をもたらす。という意味だそうです。


漢方は、経験的な医療といわれています。いくつかの生薬が相互作用によって薬効を得ているのですから、その薬効を科学的に証明していくことは並大抵のことではないことはおわかりだと思います。


このため、師について学ばせていただくことが大切といわれています。

 

これまでの師との出会いに感謝し、師への恩を目の前の方に「恩送り」そのような気持ちで、これからも真摯に漢方薬をご紹介させていただきたいと思います。

 

※ 先日、現 北里大学東洋医学総合研究所の所長である花輪壽彦先生の書かれた大塚敬節先生の追悼文を拝見しました。花輪先生は、出雲市とご縁があり、なんどか漢方の勉強会を出雲で開いてくださり、漢方の基礎を教えていただきました。

 

大塚敬節先生は、恩師や友人との「惜別の情」には特別の感慨をお持ちだったそうです。恩師や友人の亡くなられた日を手帳に書きとめ、そのかたの命日にはなるべくそのかたを思い出すようにしていらっしゃったそうです(我思古人)。

 

「人生、別離なくんば、たれか恩愛の重きを知らん」それが、大塚敬節先生の残されたお言葉のひとつだそうです。

 

※一部、重複するところがあるのはご容赦ください。内容は個人的な見解です。

 

家庭医の視点を持つ産業保健活動 ①

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プライマリ・ケア医、かかりつけ医が果たす産業医の役割について、一番に思い浮かぶものは、何でしょうか?

 

おそらく、まず最初に思い浮かぶのは

①『健康診断』の判定と『事後措置』ではないでしょうか。

いずれも大変重要な役割です。

 

とはいえ、

企業や社会的に期待されている産業医の役割はこれで十分というわけではありません。

①のほかに、重要な産業医の役割として代表的なものには

  • 就業の可否に関する医学的判断
  • 健康を維持しながら就業を継続するための作業環境の整備や改善に関する事業者への助言
  • 就業を継続するために、持病の治療やストレス対策、健康の維持増進等に関する労働者への助言

等があります。

 

さらに、最も大切な産業医の役割は、これらの期待される産業医職務を労働者本人、事業者側の管理監督者、人事担当者、産業保健スタッフと一緒に遂行していくということだと思います。

 

これらの『産業医に求められる役割』では、患者中心の医療や家族志向性、健康生成論などを意識し、コミュニケーション力を生かしてチーム医療を実践し、患者自身が多様な疾患を抱えているだけではなく、さまざまな要因が整理されていないために状況が非常に複雑困難となっている患者を日々診療している家庭医の専門性が生かされる場面が多いと感じています。

 

例えば、職場におけるストレスの要因として最も多いのは人間関係といわれています。一見、人間関係のストレスは、労働者本人の問題のように思えることであっても、実はその人のストレスを左右するような価値観や考え方の偏り等には、人類学でいう、共時や通時が大きく影響していることも多いです。そのような視点からストレスを抱える個人を俯瞰してみてみますと、誰かの責任(労働者のみの責任)というのではなく、誰のせいでもないけれど、そこに問題があるという中動態的な問題としてとらえることができます。人間関係のストレスを感じている本人にできる対策として、個人のレジリエンス力を上げるようなさまざまな方法が知られています。しかし、前述のように人間関係等によるストレスは「個人だけの問題ではない」という視点に立つと、職場の雰囲気といった共時を整えることの重要性にも気づかされます。最近では、ポジティブメンタルヘルスというものが注目され、職場の雰囲気づくりにも生かされています。

 

もちろん、高ストレスを抱える労働者に対して、まずは労働環境が適切かどうかの判断を行うことも大切です。睡眠や食事といった基本的な人間の健康維持に欠かせない生活習慣の確認も大切です。近年では、ストレスチェックが普及してきており、そうしたツールを利用することにより、メンタル疾患の発症予防につながることもあります。その一方で、ストレスの原因が全て職場にあるとも限りません。家族間で問題が発生しているような場合、家族図を用いたり、家族のライフサイクルを意識しながら相談者とご家族との関係性や成育歴に意識を広げることで、ストレスを抱える本人(相談者)が癒されることも、家庭医は日常診療で経験しています。

 

産業保健スタッフに恵まれた大企業とは異なり、中小企業や小規模事業所では、こうした役割を果たすことができる産業医が必要だと感じています。

 

それこそが、家庭医の視点を持つ、産業保健活動の大義だと考えています。

 

この記事は、

【日本プライマリ・ケア連合学会 産業保健に関するワーキンググループ】の

1月配信記事を転記させていただいております。